【コラム】 「若者が消費をしない!」はアタリマエの社会になっている

 若者が車にも、お酒にも、海外旅行にも興味を示さなくなったといわれて久しい。消費をしない、草食化している、元気がない、などしばしば否定的に語られる。
 個人消費の回復に向けて彼らをターゲットにしたい企業側も「今どきの若者は好みが分からない」「それよりシニア市場に照準を」とどこか腰を引いているようだ。
 しかし、若者は消費市場の一翼を担う存在だ。若者を取り巻く環境や彼らの関心領域を丁寧に探っていくことが大切ではないか。
本文続きは西日本新聞
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/280058


筆者に言わせれば、若者がクルマにも、お酒にも旅行にも、無関心で
興味を持たないどころか、恋愛や結婚までも無関心になっているのは
お金が無いからの一言に尽きます。

例えば北海道の場合、最低時給は786円
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/rkr/rsf/sintyaku/saitin.htm#tiiki

沖縄県の最低時給693円
http://www.pref.okinawa.jp/site/shoko/rosei/fukushi/saitei-tingin.html

一方、東京都の場合は932円
http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/news_topics/houdou/2016/_122412.html

このように、都道府県ごとに地域格差が存在しています。
仮に、これが1ヶ月ベース、年収ベースで計算するとどうなるか。

1日の労働時間が8時間で月22日出勤だと計算して、12ヶ月を
単純計算した結果が以下の通りになります。

北海道:月収13万8336円→年収166万0032円
沖縄県:月収12万1968円→年収146万3616円
東京都:月収16万4032円→年収196万8384円

なんと、沖縄と東京では年収ベースで50万円も差が出ることになります。
しかし実際には、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税、
市民税などが徴収されるので手元に残るのは、もっと少ないはずです。

次に正規雇用と非正規雇用です。
本来、正規雇用は企業の正社員として雇用され、ある程度の
給与面で生活に支障の無い待遇が受けられます。
一方、企業はこうした正規雇用の社員を、減らし派遣社員で構成し
人件費を圧縮しようとする社会になりつつあります。
派遣社員はその会社の従業員や社員ではなく、非正規雇用で
3年しか連続して勤務の出来ない臨時従業員の扱いです。
この派遣社員を大幅に増やした結果、平成26年度には126万人が
派遣労働に従事しているそうです。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/suii.pdf

非正規雇用には、この他に、パート・アルバイトなども含まれますが
いずれにせよ、企業が雇用責任を放棄した結果、
派遣労働者やパート・アルバイトなど、賃金の安い就労事案が増え
結果的に労働者の賃金が下がり、消費行動から離れていくことが
浮かび上がっていると考えます。

近年では、企業における残業未払いが社会問題化しつつあり、
今後は残業未払賃金の支払い訴訟件数で弁護士が潤うとまで
言われており、サービス残業や残業代の未払い、
深夜労働加算の未払いなど、本来支払われるべき賃金の
未払い事案で訴訟が増える可能性があります。


外国人労働者の受け入れを議論する動き
要するに、日本人の賃金が高くつくので、賃金の安い労働者を
受け入れて安くこき使おうというだけの話です。
有資格者とエンジニアは別枠としても、今の日本に必要なのは
労働人口に対して正当な賃金払いと、待遇を保証するところです。
それすら守られていない日本が外国人労働者を受け入れても
奴隷労働をしているようなものです。
一例を挙げるならば、農業実習生などが時折、逃げ出すような
話がありますが、あれは重労働に対して低賃金で割に合わないからでしょう。
そんな国や自治体から税金をもらっておきながら延命されるような
事業は淘汰されるべきなのです。


外資企業は考え方がそもそも違う。
会員制スーパーマーケットのコストコは同一労働同一賃金で
時給1200円からスタートです。
地元相場の時給なんか見向きもしませんので全国どこでも
1200円から時給が上がっていきます。
そうしたら、地元企業が「空気を読まずに若い労働者を横取りした」
なんて言ってるそうです。
これは明らかに、安い労働者を取られた愚痴なんでしょうけれど
外資企業のコストコが来たということは、その地域のコストコ従業員は
地元相場よりも割高に働くことができるので、可処分所得が増えます。
そうすると、町の収入も上がり、消費行動が増えます。
最終的には、コストコ周辺の事業所は、コストコ水準にまで
時給を引き上げる必要が出て来るでしょう。

と、このぐらい、日本の労働環境は劣悪です。
なにせ日本の教育機関は、就労することのみを教育するので
海外のように、起業しよう、会社を立ち上げよう、という風土は皆無です。
ごく一握りの変わり者だけが、自営業の漫画家になったり、
ゲーム好きが高じてゲーム会社を設立したり、
音楽好きが高じて、ボーカロイドPとして商業活動したりという例外があります。
その人達は、コミックマーケットなどの同人誌即売会が登竜門になっており
そこから読者やファンを獲得し、自営業者になったり、もしくは
仲間内で会社を起こしたりしています。
でも、生き残れるのは本当に僅かですが。

そろそろ、働き方について見つめ直す時が来ているのかもしれません。
自分の趣味やスキルを活かして、それがビジネスに結び付けられるのなら
労働者としてではなく、生産者として働くということもあるかもしれません。