【コラム】社会福祉予算の減額は本当に正しいのか

 


このコラムは、中国嫁日記の作者として知られる井上純一先生による
キミのお金はどこに消えるのか」の作中で解説される
「個人の貯金は不幸に耐える力」を元として記載しています。

保険の歴史として海上保険が解説されており、
「保険とは自分が不幸になることに賭けるギャンブルです」
とありますが、その後の
「経済的不幸は感染症のように広がっていくことです
 不幸はその人だけで終わらない」
「そしてこれは国の社会保障にも言える」
という重要な解説があります。

まあ匿名掲示板などでも
「貧乏は自己責任」「食えないなら死ねば」「税金を無駄遣いするな」
という論調はよくあります。

では、ここから私の私見による解説です。

通常、普通に働くと、年金保険料、健康保険料、雇用保険、(所得税もですが)
を給料から強制的に差し引かれます。
年金保険料はその人の積み立てではなく、その世代で年金を受給する人に
対して作用します。(本人の受給資格にも作用しますが)

健康保険料は、日本国内では皆保険制度により基本的に全員の皆保険制度として
作用し、医療が誰にでも受けられるために存在します。

雇用保険は、単純に失業保険だけのためではなく、現在のように新型コロナウイルス
の影響で休業を余儀なくされる従業員のためにも雇用調整金の財源として作用します。
また、職業訓練であったり、ハローワークのような運用、雇用のために必要な
各種制度などにも使われます。
それぞれに、日本国内でいる人を経済的な困窮で不幸にしないための制度です。

例えば、会社勤めでうつ病を発症して休業すると、
健康保険組合から傷病手当が最大で18ヶ月給付されます。
まあ給料が22万円出ていたりすると、ざっくり3分の2ぐらいの14.6万円ぐらいまで
毎月給付され、最大18ヶ月を上限として給付されます。

で、まあ18ヶ月で回復しませんでした、退職になりました。
とすると、就労出来ない状態なので、失業給付は就業出来るまで先延ばしになります。
もちろん、就業出来るようになれば失業給付がそこから給付されます。
しかし、就業できない状況が続いたとしても、まだ給付が受けられる制度があります。
1つは障害年金。これは例えば傷病状態が継続している場合などでうつ病の場合、
精神障害の範囲なので障害年金が給付される場合があります。
2つ目、健康保険と年金の範囲ではありませんが、都道府県の制度で
自立支援医療制度により、医療費の上限が設定されます。
所得が低いようなケースだと、通院医療費+調剤薬局のお薬代を合算して
月額5000円を上限とするような強い制度があったりします。
3つ目、最終手段として、「生活保護」があります。
これは、憲法25条が保障する「健康で文化的な最. 低限度の生活」を権利として
具体化したもので恥ずかしいものではなく、誰もが権利として受けられる制度です。
新型コロナウイルスで失業して、どうにもならなくなった場合でも
ためらわずに相談してください」と厚生労働省が呼びかけている。
ちなみに2020年度の生活保護申請は22万件余りでリーマンショック以来の増加
となっている。

では、こんなに手厚い社会福祉に税金を投入してまで、社会福祉を維持するメリットが
どこにあるのか、税金の無駄なのではないか?
という疑問にぶち当たるのは、まあ普通の感覚でしょう。
しかし、重大な意味があり、それは上記で井上純一先生が本で解説しているように
「経済的不幸は感染症のように広がっていくことです
 不幸はその人だけで終わらない」
という部分にあります。

不幸とは何か。本では具体的に例を上げて解説があります。
「例えば井上純一先生が死んだとします。
 月サンはバオバオが小さいので働きに行けない
 しかたなく親族をたよったとする(お姉さんのうちへ)
 すると月サンの親族の家計が苦しくなる
 苦しい親族は周りからお金を借り
 その上で働きすぎて倒れたとしたら…」
「だから1人を救うことはみんなのためなんだよ
 保険はその負の連鎖をたち切ることができるとても重要なもの」
という解説をしています。

ここで、多くの人は保険(社会保障)に依存して大丈夫なのか?
生活保護(社会保障)を受けることは恥ずかしいのではないのか?
生活保護は無駄だ!
というところにぶち当たることもあるかもしれません。
「保険(社会保障)に依存して大丈夫なのか?」
この部分については、そもそも負の連鎖を発生させないための仕組みなので
給付の対象になったときには遠慮なく受け取ってください。
「生活保護(社会保障)を受けることは恥ずかしいのではないのか?」
国民の権利なので本当に必要な時にはその権利を使うのが正しいことです。
現在はハローワークなどでも、コロナウイルス関連で失業給付などを
受けて給付が切れるような場合、生活困窮状態にある場合には、
生活保護を受けるように指導されたり、管轄の福祉事務所に連絡をされて
保護がされるように動く自治体すら存在します。
かつては水際作戦として、窓口で断られるということが社会問題にも
なったりしましたが、現在では緊急事態という扱いなので、自営業者で設備を
持っていたり、自家用車の保有があったとしても保護される場合があります。
最後の「生活保護(社会保障)は無駄だ」という部分です。
そこまでの社会保障費をかけてまで、164万世帯205万人もいる生活保護受給者を
食べさせる必要があるのか。
もちろんあります。
まあ全部ではありませんが、極端な事例としてこの205万人に社会保障が
無かったとしましょう。
205万人が住居を失い、生活や食事も出来ずに困窮していると、
全国の至るところで、食料窃盗や強盗事件が発生(食欲がこれらの人を犯罪者にしてしまう)
当然、飲食店やスーパーやコンビニなどで対応に追われる、もしくは
損失が発生する。
警察がその犯罪対応で忙殺され、重大事件の対応が困難になる。
警察の抑止力が低下し、一般生活をしている他の人の犯罪も対応が遅れ
重大犯罪の対応が後手になる。
最終的に国内の治安が急速に悪化していく。
ぐらいまであります。
それ以外でも、路上生活者が急激に増えることでも治安が悪化します。
路上生活者の生活範囲が拡大し、一般生活をしている人とトラブルが発生し、
ここで暴行事件や傷害事件に発展するケースは十分に考えられます。
また犯罪に至ってしまった場合、検察庁に送検されるわけですが、
これが増えるということは検察官の仕事が増え、処理がどんどん遅れます。
仮に起訴され裁判で有罪判決などがあったりすることで刑務所に行くにしても
判決が出るまで拘置所に置かれるにしても、すべて税金で管理されているので
だったら、社会保障費が膨大であったとしても、通常の社会保障制度と
セーフティーネットである生活保護で護られている部分の方が優位性があるという
ことです。

で、ここまで言うと「生活保護で現金で渡すとパチンコや酒に浪費して無駄」
と言い出す人もいるのですが、まあその程度で済んでいるのであれば安いわけです。
まあパチンコがダメな理由は無駄だからではなく、生活するための費用が無くなる
ことで食料ぐらい万引きすればいいとか、そういう犯罪の芽になる部分が
根底にあるものなので否定されます。
酒については、別でアルコール依存症を誘発することになるので、過剰に
酒に依存してしまうような場合、もしくは寝酒などの習慣的に飲酒をすることで
健康リスクに問題があるところはあるのですが、生活保護者に飲酒が認められない
というわけではありません。
適切な範囲の飲酒は認められています。
このあたりには、誤解と偏見のあるところもあります。

2ちゃんねるの開設者元管理人・5ちゃんねる管理人の西村博之さんは
生活保護には推奨的で、削り合って無理に働くよりも生活保護を受けたほうが
その分だけ給与が上がる(意訳)という考えもYoutubeで語っています。

別の動画ですが、普通に労働をしている人が多いので、働かないで生活できる人に対して
強く当たるというのは景気が悪くなればなるほど発生する
と発言しているところはあります。

あくまでも、社会風潮のものなので、憲法で保障されている権利に逆行している
風潮に同調する必要はありません。
それよりも、困窮した人を社会保障でまもることが最優先です。
社会風潮は、誤った考えを広めることもあり、有名なところでは
「風邪でも絶対に休めないあなたへ」
という広告コピーに対して1万1千件以上のコピー変更を求める署名が集まったことがあり、
体調が悪くても出社することが称賛された時代の名残りを下の世代に引き継いでは
いけない、と署名発起人が言っている。
誤っている社会風潮は時代によって否定されることもあるし、そもそも憲法で
保障されている社会制度を否定することはあってはならない。